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正露丸のラッパ 2006年2月11日 18:55 投稿

seirogan.jpg 最近読んだ本の紹介をします。この私もいつも眉間に皺を寄せてしまうような難しい本ばかり読んではいないようです

 「正露丸のラッパ」の題名に惹かれ、図書館の書棚から取り出しました。内容は、昔の薬のラベルの紹介とそのデザインや意匠から得られる効能などを、歴史的事実を踏まえながら時に真面目に、ほとんどはユーモアあふれる筆致で表現されています。
 ところでラッパのマークの「正露丸」ですが、一等最初に発売された時の名称は「征露丸」だそうです。今でもその名称を使っている製薬会社もあるそうです。と、いうことは「せいろがん」は一社の製薬会社が独占して販売しているのではありません。そういえば、我が生家のある小田原にも、毎年2回、富山の薬売りのおじさんが来ていましたが、あの、引き出し式の薬箱にも、オレンジと黄色の中間色のような「せいろがん」の箱が入っていました。しかし、私はお腹が痛くなると「赤玉」なるものを、口に入れられた記憶しかありません。「せいろがん」の強烈な匂いと口に含んだときの舌にヒリヒリする感覚は、大人になってから知りました。しかも、一人暮らしで歯痛に襲われた際に、その痛い歯に真っ黒な「せいろがん」の玉を押し込めるという、20代の娘にはあるまじき行動をしてしまったのが「せいろがん」との出会いでした。なぜなら「せいろがん」は歯痛に効く、と実家の薬箱のそれが語っていたことが記憶の片隅にあったからです。その後「せいろがん」と聞くだけで、私の口の中は、あの甘美な香りと痛みがよみがえってくるのです。
 さて、富山の置き薬の話も、この著書には随所に登場し、なつかしい「紙風船」の写真も掲載されています。薬の宣伝がかかれた紙風船、今は、遠い記憶になっていますが、空気を「フッ・フッ」といれると、パリパリと音をたててふくれ、手のひらに自分の体温が伝わっていくのがなんとも心地良いものでした。どこかで手に入らないものかしら?我が家は猫がいるので、きっと、大騒ぎになるだろうけど、安心して猫たちと遊べそうです。
 とまあ、著者の年代は私とあまり変わらないようですので、前出したような内容の話も多く、共感することばかりでした。
 ところで「せいろがん」発売のきっかですが、もともとは戦地に赴く兵隊さんのために開発された薬です。「戦死」とは名ばかりで、実際には劣悪な環境で病死する人が多いため、そのために「せいろがん」は世の出たのです。その後「征露」ではまずいということで「正露丸」と名称を変更したところもあるようです。ラッパのマークが使われているのも合点がいきますね。
 戦争を機に、人間は発明や工夫をすることを余儀なくされるようですが、同じ種同士が殺し合うことで生活が豊かになっていく矛盾を考える時、人間である限り「罪と罰」を引き受けなくてはいけない自分を思ってしまいます。これからは「せいろがん」の苦さも、それを想起させるきっかけになっていくのでしょうね。拝。

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