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デザインのデザイン 2006年4月29日 23:43 投稿

 岩波書店と言えば岩波文庫や岩波新書などの硬派な出版社としての印象がありますが、最近では〈ゲド戦記〉〈ナルニア国物語〉〈星の王子様〉などの古典的ファンタジーを翻訳出版する会社としても若者の間でその名を知られるようになりました。意外なことにデザイン関連の書籍もいくつか出版しています。本日読了した〈デザインのデザイン〉についての感想です。

 デザインを語る書籍にしては、ビジュアルは少なくしかもそれはモノクロを掲載し、できるだけ視覚的な誘導を読者に与えずに想像力で読ませてしまう作者のモノ作りのセンスは、田中一光氏自ら次期「無印良品」のアート・ディレクションを依頼されるた才能あふれる人だという印象です。また、著者の原研哉氏は私とほぼ同年代であるためか、彼の感覚と似ているからかもしれません。すなわち、同じ視線でモノを見ることができるということなのです。残念ながら、私の場合、それをデザインという生業では表現できませんが人間として同じ思いを共有することで、こうやって文章で共感する気持ちを表現する術を持っています。
 第一章の冒頭は『デザインとはなにか』の一節から始まるのですが、最近読んだ〈見る・聞く・読む〉(クロード・レヴィ=ストロース著)の文中で『芸術とはなんだろう』という問いがあったことを思いだし、さて、芸術とデザインの境界線はどこなのか?という疑問を持ったのです。芸術は自意識過剰で自己満足、デザインは協調性があり万人が受け入れられるもの、というのが現在のところの私の考えですが、著者は、デザインについては『生活の中に用いる喜び』と表現しています。
 さてここで、柳宗悦の民芸運動のことを想起したのですが、彼が提唱した「用の美」にも通じるものを感じ、著者のデザインに対する姿勢に第一章から共感してしまったようでもあります。
 また「なにもない」をコンセプトにデザインした旅館の話等は、茶室を想起したりと、著者はやはり「デザイナー」という横文字職業人でありながら、日本という環境でしかも良いものを見ながら成長した人ではないかという印象なのです。かててくわえて、100カ国近く海外へ足を運んだとなると、いやがおうでも「日本」を感じながらデザインの仕事をしなくてはいけない立場へとなったと思うのです。著者の原氏には、是非、茶の湯を修行してほしいものです。
 最後に、この本はカタカナ言葉が多様されています。これはコンピュータ書籍もそうですが、宿命というべきです。カタカナ言葉が日頃の生活の中に用いることに抵抗のない時代をグローバル化とは思いませんが、生活をデザインする能力、すなわち、好奇心や教養が生活を豊かにすることにも通じると思うのです。

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