悦子庵 猫

　こんなに急に暑くなるとおかしな出来事がおこるものです。

　5月に入った途端に気温が30℃を超してしまい、我が家の猫様たちも、おさかりのコメットさんを除いて、大人しく寝て暮らしていました。そんな彼らを横目に人間である飼い主の私は衣替と部屋の片付け等々、忙しい一日になってしまいました。あーあー、猫になる日を夢見ながら昼寝をするのがちょっとした贅沢となってしまったのですが、それですらもコメットさんに白日夢を邪魔されてしまうという、悲しい飼い主なのです。
　そんな日を過ごしながらも、好奇心旺盛な私、外で野良猫たちの小競り合いの声にワクワクしながら、トイレの窓から路地を覗いてみると…。外猫の〈コタキ〉が寸胴にはまっている姿を発見しました。勝手に私が名前を付けた猫〈クロコウジさん〉が寸胴にはまっている〈コタキ〉（この猫は我が家にご飯を食べにくる猫）にちょっかいを出しているところでした。この寸胴の領有権を争っての喧嘩かどうかは猫に聞いてみないとわかりませんが、路地に寸胴があることも不思議です（私の名誉にかけて、この鍋は我が家が置いたものではありません）。そして、トイレの窓からカメラを構える隣人もかなりおかしな人だと思います。
　五右衛門風呂ならぬ鍋プールで暑さをしのごうとした〈コタキ〉でしたが、その願いも〈クロコウジさん〉と〈ご飯をくれるおばちゃん〉によって、一瞬の白日夢のごとく消え去ってしまったのでした。