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若いって素敵なこと 2006年6月 6日 18:07 投稿

06_06_06.jpg 3年ほど前に映画化された「モーターサイクルダイアリーズ」の原作を(といっても日本語訳ですが…)つい最近読了した。39歳の若さでこの世を去った〈エルネスト・チェ・ゲバラ〉が1951年12月から翌52年7月に掛けて敢行した無謀とも思える南米旅行紀である。

 革命家〈チェ・ゲバラ〉が書いた日記だという潜入感を持たずに読んでほしい、と訳者あとがきで記載されていたのだが、23歳の血気盛んな若者〈チェ・ゲバラ〉の目を通して語る1950年代の南アメリカの姿は、日本人として生まれた私にとっては驚くことばかりでもあったが、なによりも〈チェ・ゲバラ〉が普通の若者で、女の子の尻を追い回し、ワインを飲み過ぎてとんでもない事件を起こしたり、今日の食事にありつくために様々な手管を用いる姿を、日記として思うままに書き綴った姿はなんとも微笑ましいばかりである。「若さ」はそれだけで貴重なものだが、それを無為に生きるのではなく、祖国アルゼンチンからチリ・ペルー・コロンビア・ベネズエラを友人のアルベルトとともに見聞することで、将来、自分が選ぶ道を日記の中に散りばめていく文章には、革命家〈チェ・ゲバラ〉を垣間みる思いであった。
 モーターサイクル南米旅行紀となっているが、実は、旅行出発から2ヶ月足らずでバイクは修理不可能となり、以後はヒッチハイクとなるのだが、あえて鉱山へと向かうトラックに便乗しネイティブであるインディオと語り合い、搾取される側へのまなざしの温かさは正義感溢れる若者である。また、医学生としての目で、訪ねた国の医療体制や衛生状態を冷静に分析し、時間があれば滞在した街の図書館で、特にその都市の文化や歴史を学ぶ姿には感心させられた。ベネズエラでハンセン病の療養所を訪問したことで、医師になること(医学校を卒業する)の志を明確にし、この旅行後、通常6年かかっての卒業を3年で終了させてしまうというパワーを発揮するのだが、もし、この旅行を敢行していなければ、今でも、ハンセン病療養所の医師として存命していたかもしれないと思うのである。
 愛国心云々が取沙汰される昨今の日本であるが、彼の考えはグローバルである。祖国アルゼンチンはもとより南アメリカ諸国一つ一つに愛を持ち貧困に苦しみ人たちを率直に「救いたい」と言える若さがうらやましくもある。アルゼンチンの裕福な家に生まれ、医師になることを志、そして他国の圧政者の銃弾に倒れる20世紀の革命家〈チェ・ゲバラ〉の若さに触れ、私も大人としての生き方を突きつけられた思いでもある。(現代企画室 刊)

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