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茶の湯入門 2000年1月 2日 01:00 投稿

熊倉 功夫 1985/8/29

 「茶の湯」の入門書といっても、点前についての解説本ではなく、茶の湯とは何か、どこからきたのか、日本における発展の歴史、民俗学な分岐等、日本独自の発展を遂げてきた総合芸術とも呼べるこの世界を学者らしい分析と解りやすい文章で解説してあります。興味のある人、これから入門したいと考えている人、もちろん現在学んでいる人にも興味ある内容になっていると思います。
 著者の熊倉さんは、茶道関連の書籍も世に送り出されている学者であり、また茶人でもあります。表千家会報「同門」に寄稿されています。現在は国立民族学博物館の館長です。
 「茶道」または「茶の湯」についての一般の方の知識は『抹茶を点てる所作』と考えている人が殆どだと思いますが(実は私も本格的に勉強するまではそう思っていました)、本来の姿は「茶事」ができる力量を身につけることが茶の湯の目的だと師匠に教わりました。ですから点前はそのセレモニーの一つになります。それについての言及はなされていませんが、日本料理と茶事で出される茶の湯料理の歴史上の交差点や差違について、そして、その後の茶の湯料理(懐石料理)の変遷などは興味ある内容で記載されていいます。利休の時代は一汁二菜または三菜というのは驚きました。彼が求めた茶の湯の世界を『人間的な料理の本質を求めると同時に、料理そのものがわびの理念の表現であり、亭主から客に渡されるメッセージの一部を担っている点である』と語る著者に、今の茶道の世界を今一度見渡すべきではないかという思いを抱かせてもらいました。
 最終章「現代の茶の湯」で言及されている『家元制度を捉え直す』については賛否両論あるところですが、日本人の気質とその制度を比較しながらの論は、学者ならではの筆のさえを感じました。
 なにはともあれ、茶の湯の世界を知る入門書としてお薦めします。

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