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木の民芸(日常雑器に見るてづくりの美) 2000年1月10日 01:00 投稿

池田 三四郎 昭和47年7月15日 初版

 先ず、著者の池田氏の紹介をしよう。1909年松本市で生まれ、その後、東京で建築写真業を営みながら、1948年に柳宗悦が主催する日本民芸運動に参画する。その後、故郷の松本に帰り、宗悦の実践する「用の美」の思想を生かすべく松本民芸家具に取り組み、現在に至る。(株)松本民芸家具・(株)中央民芸代表取締役会長、日本民芸協会常任理事、長野県民芸協会会長、松本民芸生活館館長、通産省伝統的工芸品産業審議会委員、松本市文化財審議委員長、松本デザイン交流会議会長などを歴任。
 残念ながら「木の民芸」は現在絶版になっているが、このような素晴らしい本に出会えた事で、お茶と向き合う姿勢を自分なりに考察してみたいものだ。
 茶道も幾つかの変遷を経ながら現在の姿になり、特に利休の時代でもっとも大きな変革をしている。また、彼のデザインセンスは、たわいない日常の雑器に茶道の姿を求めているようにも感じる。例を上げればキリがないが、例えば「竹花籠入れ」は農民が作物などを入れておく籠を見て花入れに利用した。また、朝鮮で作られた「井戸茶碗」の類は、一般の庶民が飯茶碗にしていたものである。そういった物が大名物として、今も大切にされている事を思うと、日常の中に息づく雑器にこそ、本来の茶道の姿を見ようとした利休の心意気を感じぜずにはいられないのである。
 本書の構成だが、著者が購入または出会った世界各地の民芸品を写真入りで4ページほどで紹介している。その紹介数は81に及び、どのページも魅力ある品々の写真、そして良き物に出会えた縁と喜びを思い入れを込めた文書で表現している。読んでいる私も、目の前にその品があるような錯覚に陥ってしまった。
 茶道に言及している話もいくつか登場している。特に「莨盆(たばこぼん)」では、由緒あるものが紹介され、茶道の世界でこのような「莨盆」に美的教養を残してくれたことに感謝していながらも、現在の茶道の姿を慮る気持ちが行間に読みとれてしまうのである。
 現在の茶道の姿が、物に捕らわれてしまっている部分が多いことは否定はできない。その道具を使いこなす力は個人の力量次第であるが、飾り物でない道具、すなわち「用の美」を根幹に据えながら道具に対しての感謝の気持ちを忘れずにいることで、対等につき合えるのではないだろうか。
 茶道の世界にも「見立て物」という言葉がある。それは、名のある高価な道具でなく、亭主自らが、自分の足で探したものであるゆえ、愛着もあると思うのだが。。。そういった物に本来の価値を見いだせるような茶人になりたいものである。
 発行元 文化出版局

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