睡足軒 2007年2月 7日 23:42 投稿
「睡足軒」は埼玉県新座市にある国指定天然記念物平林寺境内林の敷地内にあり、緑豊かつ静かな環境のためお茶席として利用するには最適な場所です。難を言えば、最寄り駅から遠い、駐車場が無い、そしてカラスが多いということでしょうか。聞くところによりますと、東京に出没するカラスのねぐらが、ここ平林寺の森だということです。なるほど、カラス天狗が潜んでいるかと思えるほど、その森は昼なお暗くひっそりとしていました。
3年ほど前になりますが、その場所で社中だけのお茶席を持ちました。その際に撮影したものです。
1枚目の写真は、家の中心にあたる広間から囲炉裏を撮影したものです。2台のファンヒーターがあるのがわかるでしょうか。また、明かりも室内の雰囲気を壊さないような和風の物が置かれ、白熱灯を使うことで暖かい雰囲気になっています。
2枚目は、広間正面の円窓と〈和敬静寂〉の扁額を囲炉裏側から撮影したものです。円窓の斜め下の棚には薬研(やげん)が置かれています。
お茶室は2室あり、それぞれ6畳だったような記憶があります。床の間の作りについては勉強不足ではっきりとわかりませんが、向かって右は壁床、左は織部床と判断しますが、どなたかご存知の方がこちらを読まれ、ご教授いただければ幸いです。
室内の明かりは、それの趣きにのっとり障子からの明かりが優先されています。障子の桟の色も年月を経た家にふさわしい色合いになっています。
茶室の天井の竹も経年変化で良い色になっています。
さて、手元にあります新座市教育委員会制作の〈睡足軒の森利用のご案内〉を要約します。睡足軒は木造茅葺92平方メートの広さを持ち、松永安左エ門氏が飛騨高山付近の茅葺の田舎屋を平林寺境内林内に移築させ、これを草案として、親しい友人たちとこの古民家で「田舎屋の茶」を嗜み、また大炉を囲んで団らんする一時を楽しんでいたようです。氏の死後、この田舎屋と敷地は菩提寺である平林寺に譲られ、平林寺は寮舍として使用していました。近年、その場所は無住状態となり荒れてしまいましたが、園庭や建物は充分活用できると判断した平林寺の偉いお坊さんから「市民に有効利用してもらえれば」という厚意により、平成14年に新座市に無償貸与された、ということです。
松永安左エ門氏は、私の産である小田原とも関わりのある方ですので、公共の茶室・小田原編「松永記念館」でページを変えてお話させていただきます。
最後になりましたが、茶道具の貸し出しについては、数茶碗・茶筅・茶杓等、一通りのお道具は借りられたように記憶していますが定かではありません。
睡足軒の利用については左記の写真から案内ページへジャンプしますので、申し込みの際にお道具等の貸し出しはお問い合わせください。また、その結果をお教えいただければこれまた嬉しい限りです。
建物は相当に古いようで、土壁のあちこちから光が漏れていたりと、草庵茶室と呼ぶにふさわしい建物でした。改修しながらも市の文化遺産として大切に使われている状況を、松永安左エ門氏は草葉の陰からにんまりと笑いながら見つめているのでしょうか。